入れ歯の手入れは、ほんとうにこすらないとダメ!?

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入れ歯洗浄剤につけるだけではダメ!

とてもよくある話です。
入れ歯が大変汚れていた患者さんに、入れ歯しっかり磨いて下さいね、とお話すると、「毎日必ず、ポ〇デントに浸してるんですけどね~」という答えが返って来ます。洗浄剤に浸けるだけで全く入れ歯をこすってないということです。

お口から入れ歯をはずして、ポチャンと洗浄剤の入ったコップの中に入れるだけで完全にキレイになると勘違いをしているようです。何割かの汚れは落ちますが、全て落ちる、ほとんど落ちるというわけではありません。

入れ歯はこすり洗いをして下さい

入れ歯は普通の硬さの歯ブラシや入れ歯専用ブラシで細部までしっかりこすり洗いをして下さい。

入れ歯に傷がつくからこすり洗いはしない方が良いのでは?

某入れ歯洗浄剤のTVコマーシャルの誤解。
「歯ブラシで磨くと細かなキズが入れ歯につき、そこにバイキンが付いてしまう」と某入れ歯洗浄剤コマーシャルで言っていた、と患者さんの多くが同じように記憶していて、そこに誤解が生まれ、歯ブラシで磨いてはいけないと思ってしまっているようです。

某入れ歯洗浄剤のコマーシャルの真実

想像ですが、そのTVコマーシャルが言いたかったことは、「研磨剤の入っている歯磨剤を使って歯ブラシで磨くと、入れ歯に傷がつきバイ菌の温床になりますよ!」ということだと思います。

もしくは、”研磨剤の入っている歯磨剤を使って”が記憶から抜け落ちているのか、コマーシャルでは意図して言っていなかったのかのどちらかだと思います。

研磨剤の入っている歯磨剤を使って、歯ブラシでごしごし磨くと細かな傷がたくさんついて、バイ菌はつきやすくなります。

しかし、現在のそのTVコマーシャルを行なっていた入れ歯洗浄剤の取り扱い説明書をみてみると、浸すだけでO.Kとは書いてはなく「ブラシでよくみがき、よくすすぐ」としっかり書いてあります。

本当に正しいのは夜、ブラシでしっかりこすり磨きをすること!

こすり磨きをして初めて出るその効果があります。酵素入り入れ歯洗浄剤は、表面についた汚れ、細菌をこすり落としてからでないと高い殺菌効果が出ません。汚れやバイ菌の塊を、そのまま全て溶かしてくれるわけではないのです。

入れ歯をこすり磨きしなければいけない理由

あなたの入れ歯を確認してみて下さい。
白っぽいものや黄色みがかった色でザラザラしている物が、入れ歯の表面に付いていませんか?

入れ歯にも天然歯につくものと同じ歯垢が付き、 それが固まってしまえば歯石になります。
歯垢はバイ菌の塊です、決して食べ残しのカスではありません。歯石はバイ菌の巣にもなり、こすり洗いをしないと、洗浄剤だけでは落としきれなかったバイ菌がやがて歯石になり、バイ菌の繁殖、増加に拍車をかけます。

こすり磨きをしないことにより、命にかかわる重大な病気もある

入れ歯に付いている歯垢、歯石は、下記の病気の原因になります。

・口内炎
・入れ歯のバネがかかっている歯の虫歯や歯周病
・肺炎の原因にもなる誤嚥性肺炎
 誤嚥性肺炎は、 命にも関わってくることもありますので、舐めてはいけません。
・最近では、お口の中をきれいにしておくと、インフルエンザの予防にも効果があると言われています。

こすり磨きには、口臭予防効果もあります

お口の中のバイ菌が口臭の大きな原因の一つですので、バイ菌を磨き残さないことが口臭予防ではとても大切です。それには “こすり磨き後に洗浄剤に浸す殺菌方法“ が口臭予防には最適です!

入れ歯の正しい手入れ方法


1、入れ歯専用の歯ブラシを使うのがベスト(普通の硬さの歯ブラシでも構いません。)

2、研磨剤の入ってない歯磨き粉を少し付ける。

3、優しく、丁寧に、すみずみまでこすり磨きをしましょう。

4、その後説明書に書かれた入れ歯洗浄剤の適温の水に浸し、こすり落としきれなかったバイキンを消滅させます。

5、よくすすいでからお口の中に戻しましょう。

磨き方のポイントおよび注意点

・歯の間や歯の噛む面、お口の粘膜に接する面は凹凸が激しく、バイ菌を落としづらいので、入れ歯専用歯ブラシが届きやすく便利です。

・大切なのは、こすり磨きを必ずして、その後に洗浄剤を使用することです。

・入れ歯を洗っている時は落としやすく落として割れることがありますので、洗面台に水を張るとか、下にタオ
ルを敷くとか工夫をして洗ってください。

熱湯消毒等やってはいけないお手入れ方法とその理由


・熱湯消毒
・アルコール消毒
・乾燥

これらは入れ歯の歪みや変形の原因になり、かみ合わせの狂いや、ゆるくなって入れ歯が落ちる、当たって痛いなどの原因になります。

ご自身で入れ歯の加工は絶対やらないでください

・入れ歯が当たって痛くとも、ご自身でヤスリなどで削らない。

・部分入れ歯のバネをご自分で曲げ直さない。

・割れたり、ヒビが入ってもご自分で接着剤でつけない。

入れ歯は精密にできています。素人がご自分の判断で手を加えると合わなくなることがほとんどで、あとあと額の大きな修理費がかかることがありますので、違和感を感じたら、歯科医にすぐにご相談ください。

やってはいけない嘘みたいな本当にあった入れ歯のお手入れエピソード

エピソード1


入れ歯は外さなくても良いという大きな勘違い

私がお会いした方で一番ユニークな勘違いの方は、(といっても、その方にしっかりご説明しなかった歯科医師の責任ですが)一年以上、入れ歯を外したことがない、という方でした。

入れ歯が歯石に埋もれていて外れなかったのです。

「入れ歯って外すんですか?」と反対に聞かれてしまいました。ずっとお口に入れたまま、ご自身の歯を磨くように磨いていたそうです!

エピソード2

入れ歯の内面に何か沢山付いているので「これはなんですか?」とお聞きすると「入れ歯が動くので、木工用ボンドで直接歯ぐきに付けてみたんだよ」 と。

でも入れ歯のガタつきは治らなかったとおっしゃってました。笑いごとではありませんが、ユニークな方がいらっしゃいます。

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