仮入れ歯は作った方がいいの?入れ歯の専門歯科医師が解説します

行事があるので急いで見た目を整えたいので仮歯はできますか?

よくこんな問い合わせをいただきます。確かに行事に参加するのに、特に食事会がその行事の一部にあるときにはマスクで隠すことができませんので困ってしまいますよね。

目次

まずは結論から


以下の項目の中で一つでも該当するものがあれば、仮入れ歯(治療入れ歯)で治療してから本入れ歯を入れる方法が非常に有効です。

・抜かなければならなそうな歯が複数ある
・歯が揺れて噛み合わせがしっかりしていないので、よく噛めない。
・よく噛めなくなって、しばらく経つ。
・予定があるので、今すぐ見た目を何とかしたい。
・本入れ歯が出来るまでの間、歯がない日常に耐えられない。
・思うような見た目の入れ歯が出来上がるか不安

仮歯は簡単でよいのでは?

通常、仮歯というと本歯が入るまでの間、削った歯に被せて見た目をおかしくないように整えるイメージですが、入れ歯は欠損歯数が多く、これ見た目も機能的にも簡単にはいきません。

治療入れ歯とは?

歯が無い部分に、見た目だけの機能性を持ち合わせていない入れ歯をその場しのぎで入れるのではなく、理想の審美性を探り、加えてお口の中の歯ぐきの治癒や筋肉、噛み合わせ等の機能の回復も含め理想の状態に導く治療に使用する入れ歯をいいます。治療後に理想的な本義歯が装着可能となります。

仮入れ歯=治療用入れ歯の6つの大切な役割り

役割り1.

歯を抜いた後の歯ぐきが落ち着くまでの間、審美性や発音、食の機能性を保つことにより、日常生活に支障が出ないようにする

歯を抜く前にまわりの歯ぐきに強い炎症があり、歯ぐきの下の骨が大きく無くなっていると、抜歯後その部分が急速に治癒 に向かい、凹んでしまう程に大きく変化することがあります。

歯ぐきは歯を抜いて1か月ぐらいの間が一番大きく変化します。その時期に本入れ歯を作り始めてしまうと、出来上がった時には、本入れ歯は合わなくなってしまいます。

しかし、歯ぐきの変化が落ち着くのを待っている間、お仕事をされている方にとって、審美性・発音は大きな問題です。誰でも、1日たりとも歯がない状態で人前に出ることは考えられません。日常生活において、歯が担っている精神的な役割は、歯を失った人でなければ分からない大きなものがあります。

役割り2

噛めない時間が長く続いたことにより、くるってしまった噛み合わせの修正をする

正常な噛み合わせでは、まっすぐ噛んできた時に、 上下の歯は毎回同じところに正確に噛みこみます。 ところが、虫歯や歯周病をひどく患って噛み合わせが崩れてしまった方は、 顎の動きまでが不安定になり正確に噛みこめません。 これを治療入れ歯で、いわゆるリハビリ治療をして、正確に噛み込めるようにしていく役割があります。

①噛み合わせがくるったまま義歯を作ると、よく噛めない入れ歯が出来上がります。

・良く噛めない(良くそしゃくできない)
・噛むと痛みが出て噛めない
・外れる
・浮く
・違和感が消えない

作成後すぐ症状が出る方から、少し遅れて出る方までさまざまですが、治療用入れ歯で咀嚼機能を回復させてから本義歯を作ることはとても大切なことです。

②噛み合わせを治すための治療期間

・2週間~1年以上に及ぶ場合もありますが、こじらせていなければ早期に良くなります。噛み合わせの治療を続け、噛みこむ位置が定まったことを確認してから本入れ歯の製作に入ることが重要です。

この噛み合わせを治すことは、5つの役割りの中でも一番重要な役割と言っても過言ではありません。

役割り3

歯ぐきの慢性炎症を治す

①コンニャクのように柔らかくなった歯ぐきの病気の治療

フラビーガムと言って、合っていない入れ歯をしていると、前歯にバランス悪く力がかかり歯ぐきが慢性的に、コンニャク状に腫れてしまうことがあります。

慢性炎症なので、痛くないのですが、その上にのる入れ歯は安定しなくなり、さらに噛むことが不自由になっていきます。治療入れ歯で適切な処置をすれば歯ぐきの腫れは良くなり、本入れ歯でよく噛める入れ歯が入ります。

②歯列接触癖という悪習癖によって炎症が悪化した歯ぐきの治療

合ってない入れ歯をしていると、無意識に噛みしめる癖がついてしまい、入れ歯の下の歯ぐきが、慢性的に赤く腫れてしまうことがあります。


治療入れ歯で悪習癖を治すことにより、歯ぐきの慢性炎症も治ります。
この悪習癖を治しておかないと、本入れ歯を作ったとしても、入れ歯に強い違和感が出て、入れ歯を入れていること自体が辛くなってしまうことがあります。

役割り4

理想の本入れ歯のための試作、たたき台になる

初めて入れ歯を入れる方は、何が良くて、何が嫌なのかが分からない事がほとんどです.そこで、探るという意味でも、治療入れ歯は本義歯のデザインの”たたき台”として大いに役に立ちます。

本義歯を作る過程でも、試適といって歯並びの好みや、噛み合わせのすり合わせを行いますが、治療イスの上でのたった1、2時間の治療や話し合いで歯並びを決めても、それがほんとうに後々満足できるものとは限りません。治療用入れ歯で実際に食べたり、生活をしてみて、そこで感じたことを本義歯に反映することに勝るものはありません。

役割り5

本入れ歯が慣れやすくなる

入れ歯を入れるのが初めての方にとって、まず入れ歯を口の中に入れて慣れる ことが最初の難関です。この最初の難関で、本入れ歯のような本格的な厚みと大きさ の入れ歯を入れると、挫折してしまう方が多くいます。

そんなことのないように、治療入れ歯は入れ歯初心者の方にも慣れやすいように、薄く薄く、着けごこちが良いように、また、痛みの出にくい素材で作り、初期での挫折を防ぐ工夫がしてあります。

まとめ

1、治療入れ歯とは、本入れ歯で成功するために必要とされる治療を行うための、特別な仮歯のことです。

2、治療入れ歯の重要な役割

歯を抜いた後の歯ぐきが落ち着くまでの間、審美性・発音・食の機能を保つことにより、日常生活に支障が出ないようにする。
噛めない時間が長く続いたことにより、くるってしまった噛み合わせの修正をする。
歯ぐきの慢性炎症を治す
本入れ歯のための試作、たたき台になる
本入れ歯が慣れやすくなる

よく噛めるあなたらしい本入れ歯を作るためには、治療入れ歯を入れることに勝る方法は有りません。特に、噛み合わせに不安を感じる方は、治療入れ歯を入れてから 本入れ歯をつくると安心度が非常に上がりますのでおすすめいたします。

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